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The Good Looking Bike I Ever Seen !

ここは梅田のど真ん中に位置するお初天神、カメラ片手に彷徨っていたら、あまり上手く行かないなと、いい加減諦めの気分となり、飲食店が肩を寄せ合う路地を抜けようとした時、思わず足が止まったのは、風景に溶け込んで一台の自転車が佇んでいた、ほとんど一目惚れと言うくらいの衝撃を受けて、どこに被写体が転がっているかわからないもんだ、取り敢えず、写真を何枚も撮ってみた訳だが、その時すでにこのアイディアが頭に浮かんでいただろう。

自身がロードバイクに乗っていて、打てば響くみたいに思うところあり、そこで思い出されるのが、何でも最高のレースマシンとは、たった一回の本番を走っただけで壊れてしまう、それ程までにチューンナップされたもの、そうF1界の誰か有名な開発者が語ったらしい、競技用機材として性能を追求された最新のカーボンフレームバイク、これもまたご多分に漏れず、随分遠くまで来たもんだと驚きの反面、日常の実用性からしたら、地に足が着いてないような気配がそこはかと…

それは炭素繊維強化プラスチックのこと、無理矢理に喩えるとペットボトルの延長線上みたい、これも技術の進歩により生み出され、従来の金属に取って代わった最新の素材だけれど、ふむ、自転車に乗れば乗るほどに、性能がすべてではなくて、乗るからには楽しくなければ、と気付かされることしばし… この金属ならではの、しなりを生かした、血の通ったような、一生モノの耐久性を誇る、昔ながらのクロモリフレームに原点回帰するのも、よくある話なのだ。

1 いつも大阪城に行くと、再建された本丸よりも石垣のほうに想像力をたくましくするもの、つまり、時の風化を耐え忍び、年輪が刻まれ、それだけの貫禄を放つ、背後にある岩の積み重ねに負けず劣らずマッチングしている、この自転車とは只者ではない。

2“川村自転車”を調べると、1915年創業の老舗であり、自前でロードバイクを製造するほどに気合の入りようで、現在では、これではもはや稼げずに、車イスを商品の主力に切り替わっているそうな、こうしてモノが残っていれば爪痕を刻んでいると言えよう。

3 こちらのライトは、タイヤの回転による摩擦力をエネルギーに変換する、昔ながらの豆電球を内蔵する一寸した懐中電灯みたいな外観であり、まるで昭和レトロとして博物館で展覧されるべき郷愁を誘わずには置かない、本日の逸品となります。

4 基本、ロードバイクは塗装やロゴに凝っているもの、だが昔はそれよりも、薄く延ばした金属片そのものを貼り付けるという直截なやり方であったようだ、これはもう装飾品と呼ぶべき類かもしれず、この自転車全身に漂うオブジェ感に貢献しているだろう。

5 自転車の顔とは、正面から見たものでなく、この場合で言えば、脚に直結する動力伝達部となるべきで、よって、右側面からの静謐に沈みながら存在を主張せんクランクとスプロケットとペダルが入った横からの全体像、これが写真の定番となりがち。

6 乗り込むほどに味わいを醸し出す革サドルで有名な“ブルックス”が奢られ、さすがに耐用年数を超えての草臥れた様子が窺えるけれど、吟味されたパーツが選ばれていることがよくわかり、フレームともども質実剛健というモノ作りのプライドを感じる。

7 アルミを加工した無駄にデザイン性の高いエンブレムが幾つも貼り付けられ、そこに込められたメッセージを推察するに、熟練の職人が手作業で産み出した我が子とも呼んで差し支えのない一台の自転車、それは製造責任者による刻印以上のものに違いない。

8 大阪を代表する繁華街、昔ながらの建物は現代でも健在で、小料理屋やバーの個人経営店が密集し、日々の買出しに活躍、いつの間にやら幾星霜、年季の入った風貌をした自転車が一台、それらが溶け込んでいる風景の一コマなのだ。

9 戦後の焼け野原におけるドサクサで、雨後の筍みたいに古民家が発生したのか、個性溢れる隠れ家みたいな店が立ち並んだ面白い絵面の路地裏、そこを舞台の背景にして確固たる存在感で主人公とばかりに屹立しているんだ。

10 後日の話、これは映えると定点観測みたいに例の自転車を撮りに行ったら、ところがどっこい、どこかの店舗から出火し昔ながらの木造建築なので火の回りも早く、まさかこんなオチが待っていたとは… でもお前の勇姿はちゃんと残っているぞ!

                            【終わり】

                           

カテゴリー: 写真 自転車

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