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CAAD10 細部に神は宿る①

いわゆる細部に神は宿ると言われ、どこか意味深なところが気にかかる、でも実のところ、ただ雰囲気に溺れているだけかも。その一方で、論より証拠という言葉があって、自転車もまた各部に目を向ければ思うところあり、それらを集合させれば雄弁に語ってくれるはず。

最近、写真に凝ってまして、カメラの設定を絞り開放に、被写体と背景の距離感を出し、光と影のせめぎ合いを頭に入れ、するとこんな浮かび上がったものが捻り出せるんですよ。

#サイズを考察す

まず取り上げるのは、己の懐に納まっている前三角形のジオメトリーのうち、特にトップチューブの長さについて。それも明らかに大きい小さいは論外であり、適正身長の上限下限あたりだと、わずか1,2センチの差異なのに、もはや3センチ違ったら対応不可、というくらい乗った感覚に影響する。逆に言えば、もがいた時の筋肉の激しい動きとか、心拍数のギリギリで走り続けるとか、厳しい斜度の坂道で重たいペダルを踏むとか、そんなのベストなポジションの一点が出てなきゃ、はなから無理な話じゃないか。

トップチューブは切り詰め気味で、スペーサー無しでハンドル位置は低く、ステムはちょい長めで前に突き出し、サドルは後退しており、見てるだけで走った際のフォームが甦ってくる。

そう言いながら、乗るたびに五感を研ぎ澄ませているが、未だに最適なサイズというものを決めあぐねており、まぁ人間の体だって、背筋の柔軟性がほぐれてくるし、手足だって多少は伸び縮みするし、最初は間延びしてるなぁ、または窮屈かなぁと思っていても、そのうち意識に上らなくなるのは、こちらのほうが自然と適応しているからで、それ位ならば遊びはあるということ。

ロードバイクには研ぎ澄ました美しさがあるけれど、必要最低限のメカメカしいドライブサイドにもまた目を魅かれてしまう。

…よくよく考えてみると、ポジションを簡単にまとめようとしても、そもそも平坦と登りで果たして同じでいいのか。かたや空気抵抗を避けようと出来るだけ前傾姿勢を取らんがため、下ハンを遠すぎず近すぎず丁度よく握れるように、フレームサイズやハンドルのリーチやステムの長さを勘案して全体像が決まる。もう一方は、極端に言えば、重たいペダルを踏み抜かんと自重を利用するダンシング走法に象徴的な、要するに力の入れやすい上体の起きたフォームとなり、さすればギュッと握れるようにハンドルは少し手前にあったほうが楽なのだ。

ブレーキとシフトのケーブルルーティングに”らしさ″を感じるのも、もはや懐古趣味になるのかもしらんが、美的観点からこれがないと物足りなさを覚えるのは僕だけなのか?

さらに言えば、こちらは比較になるようなならないような… 勝手に前のめりとなる下り坂において、尻は外れるくらいサドルの後方へと移し、リアホイールに体重を乗せてバランスを取らんと心がけ、背骨を曲げて内臓が圧迫される呼吸のしづらい窮屈な姿勢にもかかわらず、傾斜を考えれば丁度いい塩梅となる。余禄として、重心が低くなることで車体の軽すぎる接地感の薄いところに安定度が増してくれ、また、幅2センチほどのタイヤにとってコーナリング中の凸凹や砂や小石など、スリップによる落車の恐怖以外の何物でもなく、目線が近くなることで路面状況が把握しやすくなる。

エルゴノミコス=人間工学とやらがあるらしく、なにはともあれその何たらかんたらが必要なのはサドルで、とりあえず一日中走り回っても痛さを誤魔化せるコイツは、その形状に驚きを覚える。

しかし一番の効果とは、ハンドルのドロップ部分を握るならばそれはロードバイクにとってファイティングポーズのこと。どういうわけか攻めなきゃいけない気がしてくるもんで、迫りくるコーナーに対しスピードを維持したままギリギリまでブレーキングを我慢し、タイヤの僅かな接地面によるグリップ力を信じて車体を倒し込み、顔は進行方向へ向けつつも目の端では足元に異状が無いか見極めながら、きれいな放物線を描いていく。ズバリ言うならば、コーナリングとは二輪車の醍醐味なのだ。

リムはブレーキシューにより摩耗して抉れているが、ロードバイクは走りを優先して耐久性を二の次にしており、同じくらい使い込んでるCAAD10もそろそろ引退が近いかな。

おそらく、大いにありがちなのだが、無理をしてギクシャクした走りになるよりも、余裕を持ってスムーズなラインどりを心がけるほうが結果的に速いような。それに、そっちのほうが遥かに安全だしね。わかっちゃいるんだけど、ここは逸る気持ちが勝ってしまいがちで、走り切った後のリスクと背中合わせであるところの満足度も高いかしら。

【続く】

カテゴリー: 自転車

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